パリのレバノン(日常篇1)

パリでしたいこと。
大人になってからパリに2年間の留学をしていたラボのFUMINA。
偶然にも日本でパリっ子のフランソワと出会う。
今、パリに帰ったらしたいこと、書いてみる。

初めてご覧いただく方は、こちらから
パリのアパルトマン
パリのレバノン(出会い篇)


レバノンのおじいちゃんと出会ってから1週間後、大学での授業が始まった。かなりハードで、慣れるまで毎日夜遅くまで勉強する日が続いたが、余力のある日と、水曜日の午後はフリーなので、大好きなカフェ(ブログ:パリのカフェ)に行くか、おじいちゃんのところへ。

バイトは、特別に、いつから、何時から何時まで、なんてものはなく、行きたい時に行けば良いシステムだった。だからおじいちゃんの顔を見にいくつもりで。

おじいちゃんは、私の顔を見るなり、アラビア語で、

?ヤバ〜ん(日本人)来たかー

と嬉しそうな顔をする。
私の仕事とはというと、店番なのだが、店番と言う名の、食事の下準備だった。

薔薇だったらうん十万円する山のような大きさの、ミントの束、パセリの束。
それらを黙々と茎から取る。

もくもく、もくもく。

マインドフルネス。

40年くらい続く本屋さんにそんな私。
堂々として見えるのか、通りすがりの人とニコニコしたり、道を聞かれたりするものだから、従業員さんたちが、慌てて出てきて助けてくれる。大学のすぐそばだったので、同級生も来たり。

でも、変な人が来ちゃったら、ここはおじいちゃん。

?デガージュ!(出ていけ!)

恐ろしい形相とこの一言で、変な人はさっさと立ち去っていく?


2時間くらいかけて、葉を取り終えると、今度はお豆の準備。
これは場所を変えて、2階へ。

この家では、毎日フムスを作っていた。

レシピ:ミキサーで安心、基本のフムス

お豆はすでに茹でてあるので、次の日の分を下準備。

今日の分、ここからが私の山場。

店舗の2階から上はアパルトマンになっているので、店舗入り口の他、2階には玄関がある。玄関を出ると、アパルトマンが中庭を囲む造りになっている。

フムスは、中庭を眺めながら、玄関の外で作る。
どうやって作るかと言うと…

転落防止用の太めの柵の上で、
おじいちゃんから渡される、
年季が入った石でできたボウルと、
絶対何も潰せない木の棒で、

まずは丸のまま渡された、たっぷりの生のにんにくを潰していく。
大人数分、想像して欲しい。

潰せないけど、どうにか潰すのだ。

(木の棒って、ドラクエか?)

この時間になると、おじいちゃんも、食事の準備のためキッチンに。キッチンから私の様子が見えるらしく、こんな状況だもの、中庭を見て途方に暮れてボーッとしちゃう私を、後ろから激励してくれた?

次はお豆をその石のボウルに入れるわけだけど、お豆はおじいちゃんが持っている。だから、にんにくが十分に潰せていないともらえない。

どんなに早くても、にんにくだけで最低30分はかかった。途中これでいいかと見せると、ノンと言われる。これを何回か繰り返し、やっとお豆がもらえる。

もちろん、お豆も、この潰せない木の棒で。
オリーブオイルと合わせて、潰していく。

お豆が半分潰れたら、タヒニ(練りごま)と塩を入れ、また潰していく。

おじいちゃんのOKが出るまで、この作業を続け、フムスを作るのに全部で1時間30分はかかった。やり続けて、しばらくたっても、私の腕力ではこの時間は必要だった。

その頃にはもう夕方になり、店じまい。
おじいちゃんも従業員さんも一緒にテーブルを囲んで食事の時間。

アラビア語とフランス語が飛び交う中、疲れておなかがペコペコの私は、食べることに集中。
1時間30分かけたフムスは、最高に美味しかった。

最終的には、その家でフムス名人となった…(というか、仕立てられた?)

でも、そのおかげで、ホームステイ先のマダムや、マダムの姉夫婦に、フムスや、タブーリなど、レバノン料理を作ってあげられることができた。みんなとっても嬉しそうに食べてくれた。

おじいちゃんにホームステイ先でのことを話すと、

?こうやって、食べ物を分け合う、分かち合うのがレバノン人。フランス人には、なかなかそんな風にする人はいない、これがレバノン人の良いところだ。

と、ヨーダのように、ゆっくりとおじいちゃんは言っていた。
(従業員さんとの間では、おじいちゃんのあだ名はヨーダだった?)


確かに、ホストマダムにおじいちゃんの話をしたら、フランス人じゃ絶対見知らぬ人を家にあげたりしないもの、と言っていた。
やっぱり、そういうものなのかな。まあ、私もそうかも。見知らぬ人を家にあげてごはん。なかなか難しい。
でも、シェアする喜びというか、シェアしてみんなで嬉しい、それがとても自分にとって居心地が良いことに、私が気付いたきっかけでもある。

今、こうやって、私がARAKAJIMÉで、自分が良いと思ったものなら、どんどん公開して情報をシェアしようと思うのは、レバノンのおじいちゃんのおかげです。

おじいちゃんを思うと涙が出るが、
木の棒を思い出すと、
不思議と涙が止まります?

写真を探したけど、全くないのは、本当に私の日常だったんだなあと思う。
夢のような話、だけど、本当の話。

パリに帰ったらしたいこと。

FUMINA

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